自転車と家族の日記

My Life with bicycle

子どものためを疑え

 子どもたちのために●●する,という啓発活動はしばしばモラルハラスメントを含みます.特に専門家による啓発活動は,いわゆる“大人の事情”によって歪んでしまいがちなのに注意が必要です.

以下,解説

 現代は資本主義社会ですが,その特徴は労働が商品化されることです.これって,いまに生きている我々は当然のことだと思っていますが,実はたった数世代の常識です.現代社会に人間の行動がどういう影響を受けるかに関してはあまり経験値がないわけです.さらに,欧米に始まる自由主義が職業選択の自由につながり,資本主義と相まって様々な専門職が生まれてきました.それが社会を豊かにしてきたのは間違いありません.例えば羊の毛で羊毛を作る人がいて,寒いところではウールで作った服が良く売れます.ですが,温かい国に持っていってもほとんど売れません.着ると暑いからです.そこで,より涼しく,汗を吸ってくれるコットンの服を作る産業が勃興します.こうして産業革命が始まっていったのですが,その中でより温かい服を作る人々,より涼しい服を作る人々が出てきます.彼らが資本主義社会が生んだ専門人(専門家)の始まりです.社会が多様化していくに従って,無数の専門家が生まれることになります.

 製造業では専門家が生まれることは,様々な需要を満たすことができます.そのおかげで,我々はTPOに応じた様々な服を着て,それぞれが好きな食事を食べ,車や電車で快適に移動する社会に生きています.

ところが,近年,産業構造がガラッと変わってきていることに注意が必要です.現在の日本の産業構造は
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ここからの引用

 製造業の割合は年々減っており,サービス業の割合がもっとも高くなっています.Wikinには分かりやすく,「サービス(英: service)は、経済用語において、売買した後にモノが残らず、効用や満足などを提供する、形のない財のことである,」と書かれています.ではサービス業では何に対して対価を得るのでしょうか?形のない財には様々なものがあると思いますが,最大のものは人々の満足感です.これは心理的なものですから,個人によっても違いますし,状況によって変化することにも注意が必要です.

 例えばお寺や神社でお賽銭を出すでしょう.その対価は何でしょうか?物としてもらえるものでないことは確かです.いくばくかのお金の対価は自分の満足感です.ある人は1円を賽銭箱に入れるでしょう.ある人は10万円も寄付するかもしれません.信じる心によって,多くのお金を出したり,ほんの少しだったりするわけです.物でないものの価格は,きわめて大きく変動することが分かります.心理的なものの価値観を測るのは難しいということです.

 資本主義社会では,自分の労働が価値になるという話をしました.誰でも同じ仕事で時給100円の職場より,時給1000円の職場を選ぶでしょう.入職後も時給が上がらないかな?と思っているかもしれません.自分で時給を変えることができれば,できるだけ高く設定するでしょう.お金の話になると嫌な気持ちになるかもしれませんが,生物はできるだけ低エネルギーで多くの食料を得るために進化してきたものですから,食料の代替物であるお金を求めるというのは当然のことです.多少反感を買うのは,社会の中で培われた後付けの倫理観によるものでしょう.

 誰しもが社会の中で労働に対価を求めます.ここで,知らず知らずのうちに労働対価を上げるように行動してしまうことに注意が必要です.現代社会のようにサービス業が主要産業になると,満足感を上げようと行動する人間が増えることになります.ここで問題になるのは,様々なメディアを通じて,社会への啓発活動を行っている人々です.彼らは社会の隠れた問題点をあぶり出し,解決策を提示することが仕事になっています.人間ですから労働の価値を高めるように行動することになります.専門家になればなるほど,ピンポイントの問題をあぶり出し,「いかに大きな問題であるか」を社会に啓発するようになります.

 科学的根拠のない話をする人がいても,ある程度力のある団体と結びついてしまうと,大きな社会活動になってしまうかもしれません.ただし,それが社会全体にメリットをもたらすかどうかは,慎重に見極める必要があります.

 特に問題になるのは子どもの問題です.「いま,子供が危ない!」とか,「子どもが壊れる!」というタイトルを見たことはないでしょうか.親は子どもの問題には通常よりも強くリスクを感じるものです.過剰な反応をしてしまい,かえって子どもにデメリットがあることもあります.典型的なのは食物アレルギーです.卵が危ない!という情報は,卵を食べさせない親を増やし,結果的に多くの卵アレルギーの患者を作ってしまいました.非常に小さいリスクを大げさに出すのはまずいわけです.

 これまで書いたように満足感は心理的なもので,個人によって大きく変動します.啓発活動の専門家は,自分の考える問題が大きければ大きいほど,啓発活動の価値が上がることになります.本能的に労働対価を求めてしまう姿勢が,知らず知らずのうちにリスクを強調するという行動になってしまうのです.さらにメディアの盛り上がりが,不安感を増強してしまいます.

 専門家が子どものリスクを強調するという行動は,やりすぎると不安感を増し,知らない間にモラルハラスメントを起こしてしまっていることがあります.わたしが見る限り,過激なタイトルをつける本や番組ほどモラルハラスメントを起こしてしまっている可能性が高いと思います.


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  1. 2017年03月19日 12:48 |
  2. 風邪はぜったい治療するな
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