自転車と家族の日記

My Life with bicycle

風邪は絶対に治療するな

あ~,,戦いに負けた.敗北です.

かぜ薬撲滅運動はなかなか難しい.

今の医療制度は,“治療”することで診療報酬が入るわけです.
だから,カゼみたいに,何もしなくても治る病気にも必ず薬が投与されることになります.

カゼって上気道のウイルス感染症で,発熱や咳,鼻で治るわけなんですが,カゼ薬って基本的に咳止め,鼻止めですので,そんなの飲んでも意味はない.もちろん,抗生物質も飲めば耐性菌作るだけです.

しかし,そんなこと一般のヒトは知らんでしょう.
行きつけの居酒屋のおっさんは,カゼは抗生物質で治すもの,って完全に信じていました.
普通のヒトはそんなものなんですよ.カゼはカゼ薬を飲めば良くなるってね.

抗生物質以外のカゼ薬ですが,これは単なる対症療法です.
少しは咳がマシ,鼻も止まります.結果としてカゼを長引かせる結果になってしまいます.
当然でしょう。咳、鼻で治るわけですから。

成人はそれでも良いのです.無理やり咳や鼻を止めてでも仕事をしないといけないでしょう.
わたしだって,多少の熱が出ても、解熱剤で無理やり下げてでも仕事は休みません.

だけど,子どもはどうなんですか?
受験生ならともかく,乳幼児なんて,無理やり症状を抑えるような社会的な責任なんてないでしょう.
また,そもそも咳止めは成人には効いても,乳幼児には何の効果もありません.
副作用だけはばっちり出るので,飲ませた方が有害なんです.

だけど,現在の医療制度で,医師に薬を出すな,なんてことはほとんど出来ないわけです.
若い母親は,赤ん坊がカゼを引いても不安でしょう.
何とか薬を飲ませて治してあげたい,って気持ちも痛いほど分かる.

ここで考えてください。

カゼは自然に治ります.当たり前でしょう.カゼなんですから.
そこに薬を飲ませれば

カゼ ⇒ おくすり  ⇒ 治る

ってなります.「関連性の錯誤」という心理的エラーから,おくすりのおかげで治った!という思い込みができやすい.特に不安感が強かったり,視野が狭いヒト,メタ認知の弱いヒトなんかはそうなってしまいます.

さらに悪いことに,乳幼児は年に何度もカゼをひきます.

関連性の錯誤を繰り返すことで,カゼ薬は体に良いものだ!という思い込みが強くなります.
こういった心の動きを「確証バイアス」と言います.
わたしは子どものためを思って薬を飲ましている⇒それで治してあげている.
と思ってしまうのです。事実は逆なのですが.

ちなみに,薬を処方する医師や,薬を売る薬局でも同じ認知エラーから,薬が効く!ということになってしまいます.

さて,その結果,薬漬けにされた子どもたち.

米国では年に何十人も薬中毒で死んでるので,もう乳幼児へのカゼ薬は販売禁止になりました.
日本では薬用量が違うのと,ほぼ日本語が通じるために誤投与が少ないので,そこまでの毒にはなっていないですが,膨大な医療費,人件費,病院に通う手間,など,無駄なことがいっぱい行われてしまっています.

特に乳幼児の風邪診療は問題一杯です。子どもも保護者も過剰診療でおびえてる。
熱が出れば、薬を飲まさないと治らない、、って思ってるのだから、風邪を過度に怖がるのです。

そこで、わたしは自分でできる範囲で活動しようと思い,まずはカゼ薬の効果を日本で実証してみようと思ったわけです.

ところが、薬の効果を調べるってのは簡単にはいきません.
薬を飲んだ群,飲まない群で比較しなければいけないので,膨大な手間が掛かりますし,倫理的な問題もある.
そんなこと一般診療の世界でできるわけがない.

米国ではすごい臨床研究がたくさんある.それは,法律で制度化されているためなんです。
つまり,向こうの医者は、臨床研究することも仕事の一つ.
当然ながらお金も出るし,研究することが直接ビジネスにつながっている.

日本なんて,そんな制度何もなし.臨床研究やるヒトのほとんどはボランティア.
時間も金もスタッフも自前で何とかしないといけない.
患者を“治療すること”以外は報酬はゼロだし,かえって持ち出しになる.
普通,そんなこと誰もしないでしょう.
実際,臨床研究の論文は米国より1桁少ない上に,質も極めて低い.

いかにひどいか,,いくらでも例があります.
いま発売されている多くの抗生物質が認可されるとき,臨床データを提出しないといけません。

そこで,大病院の偉い先生にお金を払って,何名かの患者にその薬を投与してみるのです.
扁桃炎に⇒抗生物質を飲ませたら⇒3日で熱が下がった
みたいな,研究です.

当たり前でしょう.扁桃炎って,通常は数日で熱が下がる.
薬の効果かどうかなんて分からない.それを薬の効果って結論付けて提出してた.
厚生省もそんな研究で認可してんだから,,めちゃくちゃだ.

さらにそのデータを持って,偉い先生があちこちで講演するのです.
ケフラールって,古典的な抗生物質がありましたが,いかに扁桃炎に効くか,って講演を聞いたことがあります.
何のことはない.今なんて扁桃炎のほとんどはウイルスだって分かってる。抗生物質なんて効果ないのです.
当時のデータは全て自然経過だったってお粗末な話.
ちゃんとした臨床研究が行われていれば、こんなことにならなかったのですけどね。

他の薬も押しなべてこんな状況だから,つまらないカゼ薬の処方が巷にあふれている.

そこで,何とか日本でもできる臨床研究で,カゼ薬がどのような効果があるのかを調べようと思いたったわけなんです。

これが大変だった.わざわざ◎会の理事にさせてもらって,研究計画を立てて,データを集めてくれるヒトを探します.今までの慣例と違うことを主張するので逆風も激しい.カゼ薬の効果を信じているヒトもいますしね.

学会にも持って行って研究計画を練り上げる.
正直言って,それで薬の効果がどうかってまでは調査はできない.
何百例もカゼの子の詳細な経過を追うことなど不可能だからです。
だけど,ある程度のこと,親御さんがその病気の経過をどう思っているか,などは電話調査で分かる.

で,実際の調査では協力してくれるドクターを見つけないといけない.
忙しい仕事の合間に申し訳なかったです。
気を使うし,結果を出さないと胃が痛くなる.

それでやっと何百例かデータが集まり,データベースを構築して,入力.
さらに統計ソフトに入れて解析するわけです.
これもえらい先生はメーカーがやってくれるけど、わたしなど仕事終わってから手入力でやってた。
もちろん何の報酬もありません.今書いてても,二度とやりたくないな~

結果は当然ながら,カゼ薬なんて飲んでもメリットはひとつもないってことが分かりました。

やっとここまで来たか,,と安堵しつつ,この結果を皆が分かるように文章化しないといけない.
効かんなら飲まさない方が良いに決まってる.
そんな調子で,一本の論文を書き上げて,ようやく学会に投稿するわけです。

ところが,ここで問題です.
学会誌には無条件で掲載してくれるわけじゃない.
査読ってのがあるんです.つまり,そのデータが学会誌に掲載されるに相応しいかどうかを審査される.

査読をするヒトは大きな病院の専門家がほとんどです.
風邪を本格的に診療するヒトっていないんです。だから,なかなか理解してもらえない.

こんなんで薬の効果は分からん,,研究デザインに問題ありって返事が来てあえなく撃沈.

そりゃ~,そんなこと分かってますがな.
だけど,日本で今さらひとつひとつ薬の効果を調べることができるか,,っちゅーの.
問題あるのは分かってんだから,ざっくりそれを指摘するのが目的なのに.

ということで,ほぼ1年を費やした壮大な個人的かぜ薬撲滅プロジェクト,最後であえなく撃沈か??

わたし個人も悲しいですが、熱心にデータを集めてくれた方、アドバイスしてくれた方、わたしの主張に賛同してもらい、わたしのような人間に色々期待してくれる方もごくまれにいて、、そういった方に申し訳ないです。

悔しいんで、昼休み中ブログに書き込んでもーた。
問題あれば削除しますんでご指摘を。
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  1. 2013年06月26日 22:29 |
  2. 風邪はぜったい治療するな
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

コメント

正攻法では難しいかも。しかし、これがおかしいと思っている方は沢山います。学会ではなく、ゲリラ戦法しかないです。少しずつ最末端から賛同者を増やしていくわけです。地道に気長にやりましょう。

先日も30歳くらいの女性ですが、 「私が風邪を引いたときはクラビットを飲まないとだめだから出してくれ」 といって聞かない方が来ました。たまたま飲んだ時に良かったんでしょうね。出さないと言ったら怒って 「じゃ金も払わない」 って出て行きました。

その人はひどいとは思いますが、その人に条件付けをした医師がいるわけです。眠剤中毒も沢山いますが、ほぼすべて処方した医師がいます。

とにかく、地道に賛同者を増やしましょう。それはさておき、ケフラール、懐かしいです。ドライシロップが美味しいのが取り柄ですね。
AMPCどれもまずいし。
  1. 2013/06/26(水) 23:52:15 |
  2. URL |
  3. ヒルクライム好き #-
  4. [ 編集 ]

大変、お疲れ様でした!

抗生剤、解熱剤、ホクナリンテープは殆んど処方していませんが、
「カゼ薬」は処方している僕にとっては、大変耳が痛いです!
確かに先生の言われるように、「カゼ薬」の効果は殆んど無いと思いますが…
ではなぜ僕は処方しているのか?と自問自答してみました。
やっぱり、正直に言って周りの医院が処方するからとか、
親が欲しがるからという残念な答えになってしまいます。

また耳鼻科に行って抗生剤+カゼ薬(抗ヒス剤含有)+抗アレ剤なんかを
処方されるよりましか?とも思ったりもします。

でも本当に将来に向けての難題であることは間違いありません!
一部の小児科医師だけの訴えではどうにもならないような気がします。
またメディアなどを通じての母親の意識改革も必須だと思いますね!

それ以外に包括医療も問題ではないでしょうか?
僕の知り合いの兵庫や大阪の小児科学会や医会の偉い先生たちでも、
殆んど検査しないで、まだ未だにセフェム系→マクロライド系と抗生剤の
バトンリレーをしている先生もおられます。

うーん!僕たちが現役を引退するまでには何とかしないといけない
大問題ですよね!


  1. 2013/06/27(木) 16:20:39 |
  2. URL |
  3. A木 #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ヒルクライム好き 先生

ありがとうございます。なかなか学会が動かないのにやきもきしています。
個人の主張はなかなか通らないものですね。気長にやりましょう。
風はこっちに吹いていると思うんですけどね。
  1. 2013/06/27(木) 21:23:26 |
  2. URL |
  3. たつお@奈良 #-
  4. [ 編集 ]

Re: 大変、お疲れ様でした!

A木先生

そうそう。我々の世代で解決しておかないと、、、って思いますよね。
やっぱり制度改革しかないのかな~?
でも、そこまでは手が届かないですし。

徐々に風向きは変わってきてるように思うんですけどね。
こっちの医師会の先生も、抗生物質は無駄だね~、なんて話をする先生もいます。
実際に行動に移せるかどうかは別ですが。


> 抗生剤、解熱剤、ホクナリンテープは殆んど処方していませんが、
> 「カゼ薬」は処方している僕にとっては、大変耳が痛いです!
> 確かに先生の言われるように、「カゼ薬」の効果は殆んど無いと思いますが…
> ではなぜ僕は処方しているのか?と自問自答してみました。
> やっぱり、正直に言って周りの医院が処方するからとか、
> 親が欲しがるからという残念な答えになってしまいます。
>
> また耳鼻科に行って抗生剤+カゼ薬(抗ヒス剤含有)+抗アレ剤なんかを
> 処方されるよりましか?とも思ったりもします。
>
> でも本当に将来に向けての難題であることは間違いありません!
> 一部の小児科医師だけの訴えではどうにもならないような気がします。
> またメディアなどを通じての母親の意識改革も必須だと思いますね!
>
> それ以外に包括医療も問題ではないでしょうか?
> 僕の知り合いの兵庫や大阪の小児科学会や医会の偉い先生たちでも、
> 殆んど検査しないで、まだ未だにセフェム系→マクロライド系と抗生剤の
> バトンリレーをしている先生もおられます。
>
> うーん!僕たちが現役を引退するまでには何とかしないといけない
> 大問題ですよね!
  1. 2013/06/27(木) 21:30:44 |
  2. URL |
  3. たつお@奈良 #-
  4. [ 編集 ]

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