自転車と家族の日記

My Life with bicycle

食物アレルギー3 学校でのエピペン

食物アレルギー続き 徐々に内容が過激になってきますので閲覧注意.

前回に書いた理由によりアレルギー抗体を作る機会が増えてきたわけです.

その結果,現在は多くの子がアレルギー抗体を持っています.その中で症状を出す子はほんの一部なのですが,全体のアレルギーが底上げされることで,症状を出す子も増えています..
その中で,ごく一部の子どんがアナフィラキシーを起こし,生命の危機もあるわけです.

以上が基礎知識..

んで,アナフィラキシーの対処法ですが,一番怖いのがショックです.
ショックは血圧の低下によって起こる症状ですので,とりあえず血圧を上げる薬が必要です.
その代表がアドレナリンです.

今回のタイトルのエピペンというのは少量のアドレナリンを自己注射する薬のことです.
epipen1.jpg

これは学校にも持っていって,場合によっては教師が打つことになっているらしい.
しかし,この制度がものすごく教師の負担になってるような気がします.
また有効性もはっきりしていません.これが正しい方向性なのか,わたしは少々疑問にも思っています.

以下にちょっとした解説

エピペンはもともと蜂アレルギーのために開発された注射薬です.
養蜂所などで働く人は何度も蜂に刺されます.そのうち蜂の毒素に対するアレルギー抗体が産生されるので,刺された後にアナフィラキシーを起こすことがあるのですね.

養蜂所というのは田舎にあることも多い.病院が遠いし,アナフィラキシーは急激に進行する.
そこで,アナフィラキシーになったことがある人はエピペンを常に持っており,次回刺された時に自分で注射することで,血圧下降などのショック症状を予防するのです.ショックさえ起こさなければ意識は保たれますので,何とかなる.命を落とすことも少ないでしょう.

こういった使い方だと,いつ打つのか?というのは明確です.
打つのも自分だし,蜂に刺されたってのも感覚で分かる.
痛い!刺された!って思ったらさっさと打てば良いわけでしょう.

epipen12.jpg

その後,エピペンの適応は食物アレルギーにまで広げられることになりました.
同じアナフィラキシーショックを起こした場合,食物アレルギーにも効くだろうってことです.

理屈としてはそうなんですが,,,,いくつかの大きな落とし穴があります.

まず蜂の場合と違って,食物アレルギーはいつ誤食するかは分からない.誤食したかどうかもすぐに明確にはならない,
特に子どもの場合は誤植したかどうか,見つけるのが困難なことが多くなるでしょう.

誤食を起こしたとして,,食物アレルギーの症状の大多数はじんましん等の皮膚症状です.その他はおう吐や下痢などの消化器症状,稀に喘息が出ることもあります.アナフィラキシーの中でエピペンがもっとも効果を発揮するショック症状は極めて稀なんですね.

最近,小児アレルギー学会がエピペン使用のための指針を以下のように改訂しましたが..
epipen123.jpg

要するにちょっとでも怪しい症状があればエピペンを打って下さい,としているわけです.

しかし,ここは大きな問題があります.上のように蜂アレルギーの場合は,「いま,打ったほうが良い!」と判断するのはほとんど自分です.ところが,子どもの場合は他人が判断しなければならなくなる.アナフィラキシーは決まった症状が出るわけではなく,医師であってさえ,こういった基準をはっきり把握して,症状が出れば確実にエピペンを打てるか?というと難しいかもしれません.

ましてや学校現場で,エピペンを打つのを全ての教師に求めるのは,とっても厳しいような気がします.

日本の医師は、理屈を考えてこういった治療をすれば結果が出るはずだ,と考える傾向にあります.
(理屈から結果を予測するのを演繹法の思考と呼びます.)

1,食物アレルギーのアナフィラキシーはエピペンで症状を軽減できる.
2,全てのアナフィラキシー児を守るため,エピペンをいつでも打てる体制にすべきだ.
3,自分で打てない場合もある.家庭では親に,学校では教師に対応させよう.

一見正しい.

だけどちょっと振り返ってみてください.
演繹法を捨てて,帰納法で考えてみましょう.
(※帰納法は事象の結果から,因果関係を推定する思考方法のことです.)

すると

1,エピペン導入前の給食誤食による年間死亡児童数
2,導入後の誤食による年間死亡者数

1と2を比較して,統計学的に有意な減少があればエピペンは有効な手段である,と言えます.

医学の証明ではホントはこっちの方が大切なのです.全国の学校でエピペンを使用できるようにして,アナフィラキシーによる死亡児童を5名減らすことができた!というのであれば素晴らしい成果です.もっともっとエピペンの使用を啓発すべきでしょう.

だけど,これだけ頑張って,減ったという結果はいまだ報告されていません.
いくつか報告はあるものの,単に、症状が出たから打った、という報告だけです。

また,そもそも学校給食によるアナフィラキシー死亡というのはきわめて稀です.
調べると,エピペンの導入前には1名それらしい死亡があったのみです.

なお,日本より先にエピペンが導入された米国では,食物アレルギーによる死亡はもっと多いという報告があります.
ただ,欧米での主要なアレルギー物質はピーナッツなどのナッツ類なのです.
原因食物別に食物アレルギーの重篤度を比較すると,ナッツ>>卵,牛乳,小麦です.
日本ではこれらのナッツ類に対するアレルギーはそれほど多くありません.
(日常的にナッツを食べる習慣が少ないからだと思われます.)

日本での食物アレルギーは卵,牛乳,小麦,が多いので,児のリスクは決して高くないのですね.
だから死亡者数も桁違いに少ないわけです.

もうちょっと視野を広く見て,学童での食物アレルギーリスクを,他のリスクと比較してみましょう.

たとえば,学校での事故による重大事故・死亡者数は年間20名程度です.
これには運動中の突然死が含まれます.なかなか診断できない心疾患を持っている子は一定の割合で必ずいるからです.心電図のスクリーニング精度をより上げることと,AEDなどの救命装置の導入が必要です.

学童年齢の虐待死も結構いて,年間10名足らずです.
これも食物アレルギーと比較するとはるかに多いですね.
虐待でのリスクを減らすのはなかなか困難ですが,教師の役割は大きいでしょう.頑張ってください.

実はリスクでもっと大きいのは,自殺です.
特に十代の前半では多く,年間50名程度が自殺で亡くなっています.
ここも教師は関与すべきでしょう.自殺は教育レベルで予防することができます.命の大切さを教えてください.

学校で子どものリスク管理は進めていくのは当然のことです.
だけど,リスクの大きいものが優先です.リスクが極少のものに対策を行っても,費用対効果が悪すぎますし,そのためにかかる手間費,人件費も無尽蔵にあるわけではありません.

と、ここまで書いて、学校でエピペンを投与するようにすべき,,というのは正当なのでしょうか?
学校でもエピペンを使えるようにしろというのは,過去にほとんどなかったアナフィラキシーによる死亡を,今後もゼロにしろってことだと思われます.

子どもは大切なのは当たり前です.
しかし,全てのリスクをゼロにしろ!って言われたって,それは逃げ水を追うようなものです.
現場が疲弊するだけでしょう.しかも,そういった努力が学校での重大事象を防ぐことができるのかは,十分に検証されていないのが実情なのです.


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  1. 2013年11月05日 22:03 |
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

コメント

おはようございます。
ちょっと乱暴すぎる意見のように思います。
アナフィラキシーショックに対してエピペンが有用であるとの見解に異論がなければ、学校職員の使用に対するハードルを低くするような対策はするほうがよいと思います。
実際に姫路で行われている方法ならそんなに費用・手間は膨大ではないでしょう。これを言い出すと蘇生のための講習や、AEDもやめてしまえ、ということになりかねません。
自殺の問題が大きいのはその通りですがエピペンやAEDと違いこれをやるとはっきり効果があるというのを示せればそちらも当然進めていくべきだとは思います。
とりあえず、ここまでですがこれ以上は月末に大阪で(^_^;)
  1. 2013/11/06(水) 08:48:18 |
  2. URL |
  3. katz #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

katz さん

ちょっと過激に書きすぎましたかね。最後のところ削除しました。
まあ、色々な意見があるってことで。

> おはようございます。
> ちょっと乱暴すぎる意見のように思います。
> アナフィラキシーショックに対してエピペンが有用であるとの見解に異論がなければ、学校職員の使用に対するハードルを低くするような対策はするほうがよいと思います。
> 実際に姫路で行われている方法ならそんなに費用・手間は膨大ではないでしょう。これを言い出すと蘇生のための講習や、AEDもやめてしまえ、ということになりかねません。
> 自殺の問題が大きいのはその通りですがエピペンやAEDと違いこれをやるとはっきり効果があるというのを示せればそちらも当然進めていくべきだとは思います。
> とりあえず、ここまでですがこれ以上は月末に大阪で(^_^;)
  1. 2013/11/06(水) 19:53:53 |
  2. URL |
  3. たつお@奈良 #-
  4. [ 編集 ]

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