自転車と家族の日記

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アレルギーが増えたわけ6 免疫寛容を利用する細菌たち

最近のマイブームはアレルギー.

↓しつこいですが

狩猟時代に完成したヒトの免疫システムが,現在の環境に合わないために,アレルギーが増えてきました.

今回は免疫寛容という仕組みがアレルギー疾患(特にアトピー性皮膚炎)を増やしたことについて,思うことを書きます.

ヒトのリンパ球は様々な異物の蛋白質を抗原として,抗体を作ります.
ここで,ひとつ不思議なことがあります.

実は体の中は,もともと蛋白質だらけです.自分の体を攻撃するような抗体はできないのでしょうか?って疑問が当然出てきます.これを防ぐのが免疫寛容の仕組みです.自分の体にある蛋白質を異物と判断しないような仕組みがあるのです.

言い方を変えると,免疫寛容はその蛋白質に対しては抗体を作らないぞ!って命令のことなのです.

じゃ,その命令が発動するためには,どのような条件があるのでしょうか?

その原則は

出生の前後に長期間免疫細胞と接する抗原に対しては,抗体を作らない.

というものです.

例えば,血液の中には赤血球ってありますよね.

allergy20140422-2.jpg

赤血球の膜の上には,様々な抗原となる蛋白質があります.
※抗原となるのは糖鎖のことが多いと思いますが,,話がややこしくなるので割愛.
こういった蛋白質に対して抗体ができてしまうと,赤血球が壊れてしまいます.

それを防ぐために,免疫細胞はわざわざ赤血球の抗原を覚えていて,この抗体は作らないぞ!って命令もだしているのです.

赤血球は産まれる前から持ってますし,産まれた後も同じ抗原を持った赤血球がずっと作られます.

出生の前後に長期間免疫細胞と接する抗原に対しては,抗体を作らない.

の条件に当てはまるので,免疫寛容の仕組みが働きます.赤血球を攻撃する抗体って作られないのですね.
わたし達は進化の過程でこの仕組みを手に入れたからこそ,様々な病気から守られているのですね.

ところがっっ!免疫寛容があれば攻撃されにくい,ってことは,それを利用する悪い細菌もいるのです.

赤ちゃんは生まれた瞬間からさまざまな細菌感染を受けます.
ほとんどは必要な細菌です.腸の中にいて,ずっと消化を助けてくれる菌,皮膚を守ってくれる菌等です.そういった菌に対しては,抗体を作らないようにした方が良いわけです.だから,腸や皮膚にとって必要な菌は,免疫寛容の仕組みができていて,排除されることはありません.

しかし,そんな善玉細菌ばかりじゃないですね.ごく一部の細菌は人にとって脅威となります.

たとえば,現在の人類にとってもっとも手ごわい敵である菌は???

肺炎球菌って細菌です.ヒトは肺炎球菌に対する抗体を作る能力が弱いのですね.
最近は生後2か月からワクチンを接種することによって,乳幼児を肺炎球菌から守り,さらに社会全体の肺炎球菌を減らすことにも成功しています.

ですが,この菌が産まれて間もない間に体に付いてしまうとどうなるか?

下のグラフを見てください.
allergy20140422-1.jpg

赤は肺炎球菌(血清型6B)が,生後数2か月から体に付いてしまったグループ(正確には保菌者となったグループ).
青は肺炎球菌が付いていないグループ.

ワクチンを接種しても,明らかに肺炎球菌の保菌者となったグループの方が,抗体の上がりが悪いのです.

肺炎球菌に感染したほうが抗体が上がらない?というのは,逆のようにも思えますが,肺炎球菌は一度感染すると,ずっと鼻の奥に住みます.滅多なことでは消えてくれません.

出生の前後に長期間免疫細胞と接する抗原に対しては,抗体を作らない.

の原則が働いて,肺炎球菌の抗原(上記グラフでは6B)に対して,抗体が作られにくくなっている,という現象です.

肺炎球菌の他にも,ややこしい細菌がいます.皮膚と皮膚に近いところの粘膜に済む代表的な病原菌は,,,

黄色ブドウ球菌です.

肺炎球菌も黄色ブドウ球菌も,単独では生きていけません.主にヒトに寄生して生きている菌です.
実は人体にいるほとんど全ての菌は共生して生きていくことを選んだのですが,肺炎球菌や黄色ブドウ球菌等の病原菌は人体を攻撃することで,無理やり増えて生きていくように進化したものです.迷惑ですな.

※ヒト免疫の進化のスピードと細菌の進化のスピードは,遺伝子の回転が早い分,どうしても後者の方が上です.

さて,黄色ブドウ球菌は肺炎球菌以上にヒトの体に付いていることが多いです.
現在のところワクチンもありません.

昔からアトピー性皮膚炎の患者の皮膚からは,健康なヒトよりも高率に黄色ブドウ球菌が検出され,しかも菌量も多いということが分かっていました.ここ

肺炎球菌が鼻の奥に住むのに対し,黄色ブドウ球菌は鼻の前の方に住むので,ヒトーヒト間で感染しやすい.
また,健康な皮膚には住めないですが,アトピーのような抵抗力の弱った皮膚では簡単に増えることができます.

実は,乳児期に黄色ブドウ球菌が繰り返し検出されると,その後にアトピー性皮膚炎が発症しやすくなります.ここ

乳児期から持続感染を起こすことで,黄色ブドウ球菌に対する免疫寛容が起こってしまい,アトピーの原因になっている可能性があります.

実は成人でも,アトピーのヒトは,黄色ブドウ球菌に対する免疫応答が弱いのです.ここ

このことは,乳幼児期に形成された免疫寛容が,成人の免疫にも影響するということを示しています.

黄色ブドウ球菌に対するワクチンができれば,多くのアトピーの人は症状が改善することになると思います.



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  1. 2014年04月22日 22:28 |
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