自転車と家族の日記

My Life with bicycle

なぜ人は咳をしなければならないのか?

図は三井誠氏の“人類進化の700万年”から


チンパンジーと人はのどの構造が違う.

人はサルから進化するとき,喉頭の位置が徐々に下がってきた.
喉頭が下がれば咽頭が大きくなる.咽頭の広い空間と舌を使って,複雑な音声を出せるようになったわけだ.

旧人(ネアンデルタール人)は新人(クロマニヨン人)に比べて,脳容積も大きく,体格も良かったのに,最終的にクロマニヨン人に駆逐された.両者を比較すると喉頭の位置が違ったらしい.クロマニヨン人の方が喉頭が低く,咽頭が大きかったから複雑な音を出すことができたと考えられている.結果としてコミュニケーション能力が高くなり,集団戦闘で有利だったために,ネアンデルタール人を駆逐していくことになった.

その一方,人は咽頭を広げたことの代償で,飲み込むことが非常に困難になってしまった.

例えば,チンパンジーは呼吸しながら水を飲むことができる.
喉頭蓋と軟口蓋が近く,鼻と気管を直結することができるからだ.

しかし人は咽頭が大きく,鼻から直接喉頭に空気を入れることができない.
だから,物を飲み込むときには必ず喉頭に蓋をしなければいけない.
物を飲み込むときにのどに手をあてると,のど全体が持ち上がるのが分かるだろう.
これが嚥下という機能で,喉頭を持ち上げて,わざわざ蓋をしているのだ.

嚥下は極めて複雑で精巧な反射であるが,嚥下反射の失敗で喉頭に食物が入るのを誤嚥と呼ぶ.
飲み込むのは液体であったり固形物であったり,粘り気があったりなかったりと様々なものがある.100%誤嚥をなくすことは不可能だ.
例えばもちのように粘り気があるのは,飲み込む速度がやや落ちるため,嚥下の失敗が多くなる.

嚥下に失敗すると,喉頭に異物が入り,窒息するリスクがある.
人はコミュニケーション能力を高めて生存競争に勝つことと引き換えに,飲み込む毎に生命の危機を迎えることになってしまったというわけだ.進化って意外に因果なもののようです.

さて,進化で喉頭の位置が下がるほど嚥下による窒息の危険が増える.
生存率が下がればそういった方向には進化しないはずだが,なぜだろうか?

実は人はそのために咳嗽反射を高度に進化させてきた.
喉頭内部に咳反射のレセプターを張り巡らせ,少しでもレセプターが異物に触れると気管を収縮させて強力な上向きの気流を作り,喉頭に入った異物を咽頭に出すことで誤嚥を防ぐのだ.

つまり,咳嗽反射は,人がコミュニケーション能力を発達させてきた代償に発達してきたものだ.
咳嗽反射が発達するにしたがって誤嚥リスクが許容することができるようになり,喉頭位置を下げることができるようになったと思われる.

なお,人でも赤ちゃんは呼吸をしたまま母乳を飲むことができますね.
赤ちゃんは複雑な言語をしゃべる必要がなく,無駄に嚥下リスクをとる必要はなかったからです.
ですので,赤ん坊の誤嚥は成人に比べて少ないわけです.



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  1. 2014年11月26日 22:12 |
  2. 未分類
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コメント

RS感染で新生児が窒息しそうになる理由

RS感染で新生児が窒息しそうになる理由が今回の説明でよ~くわかりました。滝のように流れ落ちる鼻汁が喉頭に直撃するからですね。新生児って喉から流れ込むものには強い(呼吸はできる)が鼻から流れ込むものには弱いんですね。納得、納得。
  1. 2014/11/27(木) 00:27:20 |
  2. URL |
  3. りんご #-
  4. [ 編集 ]

Re: RS感染で新生児が窒息しそうになる理由

りんご先生 お腹大丈夫?

ご指摘通り!先生のフレーズ使わせてもらいます.

> RS感染で新生児が窒息しそうになる理由が今回の説明でよ~くわかりました。滝のように流れ落ちる鼻汁が喉頭に直撃するからですね。新生児って喉から流れ込むものには強い(呼吸はできる)が鼻から流れ込むものには弱いんですね。納得、納得。
  1. 2014/11/27(木) 22:24:54 |
  2. URL |
  3. たつお@奈良 #-
  4. [ 編集 ]

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