自転車と家族の日記

My Life with bicycle

IgEの起源

アレルギーはIgEという抗体によって起こります.
ここではIgEがなぜ作られるようになったのかを考えてみます.
それを知ることで,なぜアレルギーが起こるのかが分かってくると思います..

まず,IgEは爬虫類は持ってません.哺乳類だけです.今ではIgEとそれに伴うアレルギーは邪魔者って思われますが,哺乳類は進化の過程のどこかでIgEを作る遺伝子を獲得したのです.進化ってのは自然淘汰ですから,過去のどこかでIgEを作る個体,作れない個体で生存率に明確な差が出たということです.

現在の人でIgEはどういうときに作られるか?細菌やウイルス以外の異物が,繰り返し皮膚や粘膜から侵入するときです.スギアレルギーはそうでしょう.何度もスギ花粉に曝露されることで起こりますし,話題のピーナッツアレルギーもそうでしょう.皮膚から何度もピーナッツが入ってくることが,IgE抗体を作るきっかけになることは証明されています.

抗体はどれもリンパ球の遺伝子組み換えによって作られますけど,その役割によって,IgGになったり,IgMになったり,IgEになったりします.
リンパ球がIgE産生細胞に変化しやすいのは新生児期です.つまり,IgEは出生後すぐに作ることで,命を守る(生存率を上げる)生理的作用があったんです.この点,生後しばらくしてから作られるIgGとは役割が異なります.



赤ちゃんから免疫が激しく働くなんて考えられない,って思われるかもしれません.
しかし,これまでの歴史でもっとも人が死んだ原因は何でしょうか?

江戸時代には産まれた赤ちゃんの2/3くらいは幼児期までに死亡していたと言われています.もっとも亡くなる時期は,言うまでもなく新生児期です.歴史には戦争や火山の爆発,痘瘡や結核,インフルエンザ等の大流行でたくさんの人が死んだことは記録されていますが,それは成人が亡くなるから記録に残ったのであって,赤ちゃんが死んだ事実は当たり前すぎて残らないんです.
その歴史に残ってないところが,種族としての人の生存率にもっとも関わる部分です.

赤ちゃんの死因は色々あったでしょう.低体温もあっただろうし,細菌感染もあった.そこを生き延びるために,人は様々な機構を獲得してきた.低体温を防ぐための褐色脂肪を蓄え,細菌感染から守るために,移行免疫って言いますが,母親の胎盤からわざわざIgGを輸送するシステムを作った.作ったというよりは,たまたまそういった遺伝子を持った個体が生存してきた結果なのですが.

そこで忘れられがちなのが虫の存在です.先進国では新生児が虫に刺されるってことは極めて少ないでしょう.だから目に入りにくいのですが,つい最近まで新生児を虫から守ることなんてできなかった.人がこの世に出現して以来,ずっと赤ちゃんは暗い洞窟の中で産まれた.縄文時代の竪穴式住居,平安時代に貴族が住んだ寝殿造りでさえ,虫の攻撃は避けがたかったでしょう.

今でも赤ちゃんを寝かしておくと,たくさん虫に刺されます.
爬虫類の肌と違い,哺乳類は体温を維持するために乾いています.その代償として虫に対して弱くなっちゃったんです.
また,体温が高いってことは虫に見つかりやすいってことでもあります.

蚊くらいの弱毒の虫ならまだしも,昔の洞窟にはアブ,ブヨ,ハチ,ダニ,多くの昆虫がいたはずです.
月齢が低いほど皮膚が薄い.虫は確実に赤ちゃんの生命を脅かす存在だったと思われます.

そこで人は“繰り返し皮膚や粘膜から異物が侵入するとき”,皮膚の下に防御抗体としてのIgEを置いておくことにしたんです.虫に刺された場合でも,素早くIgEが反応して膨隆疹を作り,血管から化学物質を出すことで,少しでも生存率を上げようとしていたのです.
IgEは赤ちゃんが虫と必死に戦っていた頃の名残りなんです.

腸に寄生虫を持っているとIgEが上がることから,IgEが寄生虫をやっつけるためにできたという説があります.しかし,これではIgEの起源をうまく説明できません.まず,寄生虫が入ってくるのは,生野菜や肉などの固形物を食べるようになってからですので,早くても1歳過ぎです.さらに,寄生虫を持っていてもすぐに生命に関わるということはありません.致死的な寄生虫感染ってのは多くはない.ということは寄生虫の感染が遺伝子選択に関係した可能性は薄いでしょう.

人は生後すぐから半年くらいまではIgEを作りやすい.初期の虫攻撃から皮膚を守ってるのですね.それ以降は徐々に皮膚が強くなるのと,母体からの移行抗体が枯渇することによりIgGを作らないといけません.
専門用語ではTH2の状態からTH1優位になると呼びます.

このTH2⇒TH1へのスイッチは,どのように行われるか?IgGを産生するようにリンパ球が分化するのは,腸の中です.腸内細菌は多くの種類があり,しかもひとつひとつがたくさんの抗原となる物質を持っています.リンパ球はその抗原刺激を利用するのです.

自然分娩では,赤ちゃんは母親の肛門由来の細菌を飲み込んで腸内で増えます.それ以外にもたくさんの食物由来の細菌が入り,リンパ球が刺激されるのことで,TH1のスイッチが入るのです.現代では,赤ちゃんがあまりに清潔で細菌が少ない食事を続けているのが,TH1刺激が入りにくく,アレルギー抗体が作られやすいことの原因です.

また,現在の赤ちゃんは,気密性の高い,清潔な部屋で育てられます.
この環境では虫からは十分に守られています.だからIgEが役に立つことはなくなってきました.
その代わりに赤ちゃんの周囲に増えたのはほこりの中の食物でしょう.周囲の大人が食べた食物蛋白が皮膚に付くこと.空中に浮遊しているダニ抗原を吸い込んで粘膜に付くこと.こういった抗原を虫の侵入と勘違いして,リンパ球がIgE抗体を作るようにクラススイッチしていきます.皮膚の弱い子では侵入する抗原量が多く,多種類なので,多くの食物に感作されアレルギー抗体を持ちます.健康な皮膚でも乳児期には抗原の侵入は起きるので,卵に感作されている子も多い.

IgEが作られるメカニズムはそうなのですが,その一方でアレルゲンとなる食物を食べさせることでIgG4クラスの抗体ができることも証明されています.一定以上IgG4があれば,IgEの作用を打ち消すので,感作された赤ちゃんも,食べていると自然にアレルギーではなくなっていくはずなのです.

だけど,アレルギーは危ない,って気持ちがあるとどうしても「小さいうちは食べさせないでおこう」って意識が働きます.その上,乳児期は容易に制限食ができてしまいます.するとIgG4が産生されず,真のアレルギーが発症します.現代の生育環境と,不安感が食物アレルギーを作ってきたわけです.

アレルギー児を減らすためには,安易な制限食はやめた方が良いし,同時に乳児期早期から腸内細菌を増やすことを考えた方が良いでしょうね.
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  1. 2015年09月10日 23:25 |
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