自転車と家族の日記

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アトピー性皮膚炎が増えたわけ その6 IgEの起源

しつこく続くシリーズ.

アトピーは皮膚の慢性感染症である,という認識を持たないと,いつまで経っても卵とか牛乳とか,食べ物に関係するって思われてしまいます.アトピー概念のフレームシフトが必要です.

さて,人間社会に広がった黄色ブドウ球菌は,特に弱い個体で増殖し,乳児期から持続感染することで,人の体質まで変えて行きました.黄色ブドウ球菌は単に生き残り戦略として遺伝子を紡いできただけですが,人の遺伝子は細菌ほど速く変化できないので,細菌環境とのミスマッチを起こしてしまったわけです.

アレルギーと言っても色々ありますが,ここではもっとも一般的な,即時型アレルギーのことを書きます.
即時型アレルギーは1型アレルギーとも呼ばれるもので,その原因はIgE抗体です.
卵の蛋白質に対するIgE抗体を持つと,卵のアレルギーを起こすことがあります.
また,スギに対するIgE抗体を持つと,スギ花粉症を発症することがります.
※抗体を持っている全員が病気になるわけではないってことにも注意が必要ですが.

IgE抗体は哺乳類だけが持つものです.人間にとって邪魔ものと思われていて.その本当の役割は良く分かっていませんでした.
I幼弱リンパ球がわざわざ遺伝子を組み替えて,IgE抗体を作るリンパ球に変化するのですが,そういった変化は出生後すぐから起こり,生後6か月くらいまでがもっとも活発です.なぜでしょうか?

ここで進化生物学から考えて見ましょう.
人類は洞穴での生活で生き延びるように進化してきたのですが,赤ちゃんは今のような清潔な環境で産まれることはありません.洞穴の中で産まれることが多かったでしょう.

原始時代に産まれた赤ちゃんの死亡率はどうだったのか?正確に調べるのは困難です.
しかし,近年まで赤ちゃんは産まれても成人できないことは当たり前でした.
例えば,明治天皇は5名の男の子を作りましたが,4名は亡くなっています.
過去の天皇家の歴史でも,世継と思っていた子が夭逝(若死に)したということは頻繁にありました.
要するに,近代になって,当時の最高の保護を受けていたはずの天皇家でさえ,“子どもが死ぬこと”を避けることができなかったのです.

これまで人類の歴史で,多くの天災や気候変動,餓死,感染症の流行,戦争なので多くの人が亡くなってきました.
しかし,人がもっとも死んだのは,歴史に残るような事件ではなく,赤ちゃんの自然死です.
あまり注目されませんが,現代になるまで“赤ちゃんが死ぬこと”はあまりにも当たり前すぎたのです.

生後すぐからIgE抗体を作る仕組みが残っているということは,赤ちゃんがその時代を生き延びるための役割がIgE抗体にあったということです.

現代ではIgE抗体はどうすれば作られるでしょうか?
アレルギーの発症を見ても明らかな通り,皮膚や粘膜から,抗原となる蛋白質が繰り返し侵入してきたとき,です.
例えば.小麦で作った石けんで体を洗うと小麦に対するIgE抗体が作られます.
スギ花粉を毎年吸い込むことで,スギに対するIgE抗体が作られます.

IgEは生後すぐから繰り返し皮膚に侵入する蛋白質をどうにかしようという目的で作られたと推理できます.
では,原始時代から赤ちゃんの皮膚に繰り返し侵入しようとしてきたのは?
答えは虫です.

人は哺乳類ですから,産まれたときから体温を高く維持しないと生きていけません.
そのために,赤ちゃんは低体温にならないための仕組みをたくさん持って産まれてきます.

その体温を感知して寄ってくるのが虫です.昆虫もそうですし,ダニの仲間もそうだったでしょう.
現在の生活では信じられないでしょうが,赤ちゃんは産まれた直後からたくさんの虫に刺されたはずです.
新生児の皮膚は極めて薄い.また,大人のように手ではたいたり,動き回ることもできないので,虫刺されに対して赤ちゃんは無防備です.

多くの“刺す”虫は唾液の中にも毒素を持っていますし,またウイルスや原虫などの病原体を媒介します.

虫刺されは多くの赤ちゃんの命を奪ったでしょう.IgE抗体を作るような遺伝子は,そういった虫刺されに対抗し,少しでも生存率を上げるために作られた,と考えるのが筋が通っています.

続く



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  1. 2015年10月02日 23:00 |
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