自転車と家族の日記

My Life with bicycle

アトピー性皮膚炎が増えたわけ その7 そしてアレルギーが発症した

しつこく続くシリーズ

アフリカの熱帯雨林で生活していたサルの祖先が,気候変動により疎林になり,歩くことを余儀なくされ,果物を食べる生活から,徐々に肉を栄養とする狩猟採集生活に変化していきました.人の遺伝子が完成したのは約20万年前で,アフリカを出たのが6万年前とされています.(年代については諸説あり)

実はその時代から遺伝子はほとんど変化していません.人は洞窟で産まれ,母乳で育てられ,産まれてからほとんど入浴することもなく,虫や寄生虫だらけの環境の中で,非常に細菌の多い食物を食べていました.人はそんな環境で生き延びるように調節された遺伝子を持っているのです.

ところが,近現代から赤ちゃんが育つ環境は大きく変わってきました.
人はクリーンルームで産まれ,母乳と加熱処理された食物を与えられ,虫や寄生虫は少なくなり,産まれてから毎日のように入浴します.

さらに,石けんの登場は大きなインパクトがありました.
石けんが初めて作られたのは紀元前3000年ごろと言われていますが,一般に広く普及したのは産業革命後です.
日本で始めての石けんの製造は明治に入ってからですので,150年も経っていません.

石けんは界面活性剤であり,非常に強い殺菌作用があります.
赤ちゃんは産まれてから皮膚をきれいにするために何度も石けんで体を洗われます.
このような状況は遺伝子の想定外なわけです.

赤ちゃんが産まれてから2ヶ月間くらいは体脂の分泌が多く,皮膚には細菌が繁殖しやすい環境になります.
これは,母親の肌との接触により,早期から必要な細菌を皮膚で繁殖させるためです.
わざわざエネルギーを使って分泌物を増やし,必要な細菌を生やしやすくすることで,皮膚を守ろうとしているわけです.

この時期に皮膚に入り込んだ菌は,ずっと持続的に肌で生きていくことになるので,免疫抑制が働くことになります.
体を守る細菌は,異物ではなく,自分自身の一部だと認識されていくことになって,生涯に渡り,肌を守ってくれるのです.
赤ちゃんは母親から遺伝子を受け継ぐだけでなく,こういった様々な微生物も受け継いでいくのでしょう.

しかし,生直後から石けんを何度も使用することで,皮膚に必要な細菌が生着しにくくなります.
持続的な抗原刺激が減り,免疫寛容も働きにくくなり,皮膚の上の菌が減少します.
そのために,現在の子どもは肌が乾燥しています.

さらに,近年になって広がった黄色ブドウ球菌の影響があります.
この菌はいわゆる“悪玉”菌で,肌を守る常在細菌と拮抗するものです.
現代は社会全体に黄色ブドウ球菌が広がってしまったので,産まれた直後から赤ちゃんの皮膚に付くことが多い.
本来は常在細菌の細菌叢が出来て欲しいところに,黄色ブドウ球菌が入ってきてしまう結果,湿疹の原因となったり,皮膚のバリア機能が弱くなってしまう結果になります.
こういった赤ちゃんの皮膚の細菌叢の変化によって,皮膚から様々な異物が入りやすくなってきているののです.

人は産まれた直後の虫刺されに対抗するために,IgEを作る遺伝子を獲得し,現在まで持ち続けています.
現在では赤ちゃんが虫に刺されることは少なくなった代わりに,住環境の中に様々な蛋白質が存在します.
蛋白質が何度も皮膚から侵入すると,それに対するIgE抗体が作られることになります.

現在の一般的な赤ちゃんの成育環境を考えて見ましょう.
密封性の高い住宅,食物が豊富にあり,乾燥させた物が多いので,食べるときに細かく飛び散ります.
クッキーの中には卵や小麦,牛乳の粉が入っています.
割ると,そういった蛋白質は細かく空中に舞い上がっているでしょう.
それがハウスダストの中に紛れ込んで,弱くなった赤ちゃんの皮膚から侵入し,IgE抗体が作られていくのです.

また,赤ちゃんは生後すぐはIgE抗体が作られやすい環境にありますが,成長に従い,IgG抗体が作られやすいように免疫が変化してきます.
※IgE抗体は虫の毒をなるべく体に入れないようにするため,IgG抗体は細菌やウイルスから体を守るためのものです.

要は産まれた直後は皮膚が弱く,できるだけ虫から守る抗体をたくさん作りたい.細菌やウイルスには,母親のお腹の中にいたときにもらったIgG抗体で代用します.しかし,徐々に自分でIgG抗体を作っていかないといけないので,リンパ球はIgEからIgGを作る方向へ傾いていきます.これを専門用語でTh2からTh1へシフトすると言います.

IgGがもっとも作られるのは腸内細菌の刺激です.産まれてからどんどん腸の中に細菌が入ってきて,中で増殖します.
その抗原を利用して,様々なIgG抗体が作られるのです.
腸内細菌が増えることが引き金になって,産まれた直後のTh2優位な状態からTh1の方へ免疫が傾いていくわけです.

しかし,現代の赤ちゃんは出生後からずっと,完全に火の通った,ほぼ無菌の食事が与えられます.
こういった食生活が腸内細菌の増殖を遅らせて,Th1へのシフトが遅れてしまうことに繋がり,Th2が優位の,IgEが作られやすい状態が続いてしまいます.だからアレルギーが増えてしまうわけです.

このように,原始時代に作られた免疫システムが,現在の赤ちゃんの生育環境とミスマッチを起こしたことが,アレルギー疾患を増やしてきたのです.


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  1. 2015年10月03日 23:31 |
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